2017/06/28

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勝つための野球を教えないと自分たちで考えるようになる


以前のルールとセオリーは別物の記事でルールとセオリーを分けて教える指導方法を紹介しました。

野球を始めたばかりの子達に指導をする時に、ルールを教えるのですが、セオリーも教えがちになります。

セオリーを教えてもらった子が長く野球を続ければ、いずれルールとセオリーの違いに気づくと思いますが、少年野球をやっている間は勘違いしたままプレーをしたり、自分で考えることなく試合をしたりして、面白いアイデアを出す可能性を奪うことになると思います。



例えばドッジボールのルールを教える時に、競技のドッジボールのような「相手にボールがある時は、横一列に並んでひたすら避けよう」と教えるようなものです。

それでは何も楽しくありませんし、隅っこは狙われにくいとか、どんな子が当てやすいとかのアイデアや、ライバルとの一騎打ちなどの楽しさを味わうことができません。

教えることだけが指導ではない

野球でも同じようなことが言えます。
野球のセオリーを教えることで、セオリーを知っているチームのほうが試合では勝てるかもしれませんが、セオリー通りにしなければならない、セオリー通りでなければ怒られるの繰り返しになってしまい、楽しさが半減します。
なにより、野球を始めたばかりの子にしかないアイデアだったり、可能性を潰していると思っています。


指導内容も変わってくるので、子供のやる気や理解度にも影響してきます。

指導者の経験と感覚を伝えようとするのでわかりにくく、子供は何を言っているのか、どれが正解なのかがわかりません。

例えば、リードの小さい子に「もっとリードしろ!」と言ったり、リードが大きすぎれば「リードし過ぎ!」と言って曖昧な指導になりがちで、子供からすればどっちなんだと思うかもしれません。

守備位置なんかもそうですが、定位置と言いながらも決まった場所があるわけではありませんが、経験者はなんとなく定位置がわかります。

しかし、野球を始めたばかりの子に定位置なんてわかりませんし、わからせようと「この辺が定位置」と教えても、逆に”そこにいないといけない”といった考えになってしまい、いつまでたってもバッターや状況に応じてポジションを決めれない選手になってしまいます。

こういった理由で、私は定位置を教えません。
一応、ポジションの話は最初にしますが、実際に守っている時は好きな所で守ってもらえば大丈夫だと思っています。

セカンドが二塁上にいても何もいいませんし、サードがピッチャーと三塁ベースの間ぐらいの場所にいても放おっておきます。ライトがセカンドとファーストの間にいることもあります。
それではヒットゾーンが増えるではないかと思われるかもしれませんが、その通りです。ヒットゾーンを減らすためにはどうしたら良いかを考えてもらうために、あえて何も言わないのです。

ゲームをこなしていけば、よく打球が飛ぶ場所に守るようになりますし、二塁上で守る子もいなくなります。二塁上にボールは飛んできませんから。
半年も経てば、教えなくても我々が思う定位置とほぼ同じ位置に守るようになります。

リードの話でもそうですが、リードが小さい子は自信がなかったり、アウトになるのを恐れたりしています。反対に、リードが大きな子は自信があり、ここまでは行けると思っています。

それは経験していく中で身につく感覚ですし、リードが大きすぎてアウトになれば自然と小さくなります。
言われたからリードを小さくするのではなく、自分で経験したからリードを小さくするといった過程を大切にしたいのです。

また、子供たちの行動には必ず意思があり、なにも考えていないようでも、気持ちが現れているので、そこは大人が汲み取ってあげるべきです。

教えない指導

私も野球経験者なので子供たちを見ていると言いたいことは山ほどあります。
しかし、それを野球を始めたばかりの低学年の子に言っても理解できないでしょうし、凝り固まった考えになってほしくないので、私は教えません。

教えていないのでうまくできません。
私は、それを微笑んで見守るだけです。
「がんばれ」などの声はかけたりします。

うまく行かなかった時は、どうやったらうまくいったかを一緒に考えます。
時間を取ってゲーム形式で実感させたりします。

中継プレーの指導

チームが結成して半年が経ちますが、中継プレーについてはまだ、なにも教えていません。
試合はしていましたが、ある練習をするまではライトオーバーの打球をファーストが走って取りに行ったり、ライトが取ってセンターに手渡ししてセンターが内野に投げるといった面白いプレーがたくさん見られました。
ある程度、外野から内野までボールをつなぐ難しさを感じてもらった所で、ある練習をしました。

ある練習とは、”センターの一番深いところに置いたボールをどのチームが一番早くホームベースまで持ってこられるか”といった競争です。

ルールは簡単、1チーム3, 4人で、どんな方法でも良いのでボールをホームベース上にいるコーチに渡したチームが勝ち、というものです。選手のスタート位置は全員がマウンド上で、笛の合図でスタートです。

スタート前には、チームごとに作戦を考えてもらいます。
作戦が決まれば、スタートです。

1回目は様々な方法が出ました。
リレーのように走ってボールを手渡しするチーム、60メートルほどしかない距離を4人全員で中継するチームなどがありました。肩に自信がある子がいるチームは1人で投げるなんてことをしていました。

終わったあとに再度、作戦タイムを設けるを繰り返し、3回程度するとどのチームもほとんど同じような作戦になりました。

1人がボールを拾いに行って、1人が中継に入り、その後ろにカバーが1人、もう1人がホームベースのカバーに入る。

なにも教えていないのに、中継プレーの形ができあがりました。
勝つチームは選手の配置にも気を付けており、ボールを拾いに行く人は足が速く肩が強い人、中継の選手はボールを拾いに行った選手からかなり離れて待っていました。

このように、どうしたら早くボールを運べるかを考え、経験させることで、私達が経験してきたことをわずか10分程度で教えなくても考えれてしまうのです。

これを教えようと思うとシートノックのたびに厳しく指導しなくてはなりません。
根気のいる作業です。それでは効率が悪いように思えます。

気付きの大切さ



私達が、野球で行うプレーは必要だからしているプレーばかりです。
効率よく行うためにはどうしたら良いかを教えてもらったり、考えたことを実践しているだけなので、それは子供でも考えることができます。

子供たちには、これをやったら勝てるとか、これはやらないほうが良いなという自分たちだけの必勝法を見つけてほしいのです。

言われたことだけをやっていれば強くなるのかもしれません。しかし、それだけでは考える楽しさを奪うことになると思います。

アイデアを出して実践してみる。
これは生きていく中でも必要なスキルだと思います。

そして、アイデアを出したり、気付いたりすることに意味があると思っています。

子供は勝つためであれば様々なアイデアを出します。
相手のいいところを真似したりしたり、分析したりします。
試行錯誤もします。

しかし、セオリーを教えすぎることは、こういった考えるチャンスを奪っているのです。

まとめ

今回は、セオリーを教えない方法について書きましたが、セオリーが悪いわけではありません。
子供たちに考えさせながら野球を教える指導方法の一つにセオリーを教えない方法があると思います。

何事も、与えすぎず、考えさせる。
野球に飢えた状態を作りたいのです。

できなくても、教えていないのだからできなくて当然と思えるようにもなります。

短期的に結果を出したいのであればセオリーは必要になってきますが、それだけでは勝てません。
グラウンドに立っている選手一人ひとりが状況を感じ、考え、行動することが勝利につながると考えています。

セオリーについて教えない方法について中継プレーの練習を紹介しましたが、私のチームでは様々な方法でセオリーを教えず、考えさせる練習を取り入れています。

また、別の記事で紹介していこうと思いますので、楽しみにしていて下さい。



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